昨年の鳥害の雪辱を期して、サクランボの剪定をする農家
私の手許には、去年の6月3日に山形から届いた「さくらんぼ狩り」中止の手紙があります。それにつけて、平素は元気な板垣代表の暗く沈んだ、その時の電話の声が思い出されます。
出羽庄内特産は米農家として通っていますが、実はサクランボも評価が高く、その甘い果実のファンは多いのです。地元の有名レストランで使っていただいたり、6月下旬になると東京や大阪方面からも若い女性が何人もサクランボ狩りに来たりしています。サクランボは田植えの準備が始まる前の冬期に枝の剪定ができ、田植え作業がひと段落するタイミングでビニルハウスの屋根かけなどが出来るので、稲作との作業の組み合わせが良いそうです。収穫期には近所のおばちゃんたちでしょうか、数人が実の選定やパッケージ詰めに出羽庄内特産に来てくれたりしています。
さて、そのサクランボ。
去年の初夏、その前日あたりに老父から注意喚起されていたにも関わらず、楽しみに育ててきた自慢のサクランボがカラスに台無しにされた光景を板垣氏は目撃したのでした。彼は、地元で彼のサクランボを評価してくれているイタリア料理店にこの事件を伝え、当社にもその顛末を連絡してきました。
先の手紙には、早熟のまま食い荒らされたサクランボの実と、落果が散在する畑地の写真が添えてありました。栽培して30年。このような鳥害は初めてだそうです。地元の人によると、この年は山間地にカラスの餌がなかったことも里のサクランボが狙われた要因だろうとのことでした。この生産者では、サクランボのビニルハウスに屋根をかけるのが少し遅れた。それが災禍を招いたようです。
怪我の功名でしょうか、サクランボの分、米に集中して、幸い豊作となった。それで経営は打撃を免れました。
しかし多くの顧客の期待に応えられなかった。
注文をいただいていた先には、お詫びの連絡をし、既に代金をいただいていた先には返金をし、去年の初夏は大変だったようです。
そして2月。今年こそはとの決意も新たに、板垣氏は猿(マシラ)の如く、サクランボの木に登ります。蕾があまり大きくならないうちに、余計な枝を剪定し、栄養分の集中を図ります。例年では腰のあたりまで雪があるそうですが、今年は50センチメートルくらいとのこと。それでも雪中、歩くだけでもかなりの重労働です。雪が灯りになって、捗るときは夕方6時くらいまで剪定作業は続くそうです。
我々は遠く東京にあって、彼のリベンジを祈念しています。