石巻水田サポート 2021/02 共生の土壌
農林業センサス(農林水産省が農林業を営む全ての農家、林家、法人を対象に実施する調査で、5年毎に行われている)を見ると、農家が、頻繁に寄り合いを持ち、自然環境の保全や農業用水・排水の管理に関する話し合いに多くの工数を割いている様子が伺えます。
また、用排水路、ため池・湖沼、河川、それから農地、森林といった地域資源の保全活動を行っている農業集落が多くあることが分かります。
これまで私たちは、庄内地方に取材し、「水」に注目して、庄内Life Village reportを纏めました。そして今度は、石巻を基点に取材し、「土」に注目してレポートを書きたいと考えています。門外漢故に、学術的に正しいレポートには到底なりえませんが、まずは、私たちの関心が何処にあるか、述べさせていただきます。
微生物との共生で我々は生まれ、
共生は繰り返されて、今も続いている
約38億年前に、地球最初の生命として、単細胞の微生物が、深海底の熱水噴出孔付近で誕生しました。やがて微生物同士は共生したり寄生したりして、よりよく生きる方法を見つけます。遺伝子を交換したりする者もあったようです。細胞数が少ないとくっつくことで大変化を遂げることもあったと思います。多細胞の生物がどんどん進化して行った。
そして現在、地球には、極めて多数の微生物と、多細胞の真核生物である動物や植物が棲息するようになっています。我々の視野には、人間や動物、植物こそが地球の住人のように見えますが、圧倒的な多数は相変わらず微生物です。そしての微生物との共生の習慣は今も続いている。
例えば、我々人間は、細胞内で、かつて細菌であったミトコンドリアと共生し、更に体内では、数多くの微生物と共生しています。細胞の数で言えば、人体を構成する何十兆個の細胞の、更に何倍もの数の微生物と共生していると言われています。
視野を変えて、土を考える
土の中、植物の根のすぐ外側は「根圏」と呼ばれ、ここには多数の微生物がいて、根と共存共栄している。土中の物質を根が吸収できる形に変えたり、害をなす細菌の侵入を拒んだりしています。
動物も然り。例えば人間の大腸の内側には、多数の微生物(数百種類、細胞約100兆個とか)がいて、人間と共存共栄している。人間には消化できない食物繊維を分解したり、ビタミンを合成したり、ホルモンを作ったり、体を防衛する免疫機能をサポートしたりしています。
表と裏、根をひっくり返せば大腸だし、大腸をひっくり返せば根。大腸の内側が微生物の世界であるように、根の外側すなわち土の中も微生物の世界です。医療者が腸内環境に注目するように、農業者は土壌に注目する。それはつまり、害を為す微生物もいるが、それより遙かに多い微生物はそうではないどころか、有益である。このことを知っているからです。彼らは微生物を無差別に攻撃する医療や農法は忌避する。
そういえば、良く肥えた田んぼの雪は早く融け、土を食べて「甘い」と言った農家がありました。米を作りながら「土が痩せていく感じがしない」ことに安堵を覚える農家がありました。
農家は、土をどう見、どう扱っているのか。
出来るだけ早い時期に、土を巡る旅を再開したいと考えています。