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雪が早く融ける田

今年の田植えの頃より前の期間、それは冬から初夏にあたりますが、この期間の庄内について、平素から庄内の写真を撮り続けていらっしゃる地元のカメラマンの写真を中心に、庄内の農業を、極めて偏った側面だけではありますが、点描してみようと思います。

先ず、最初の写真は、鶴岡市櫛引(くしびき)近辺を流れる12月中旬の赤川です。赤川は、鶴岡市の中央より東寄りを南から北に40キロほど流れて日本海に注ぐ一級河川です。この赤川の水を利用して庄内平野に水田が開けました(赤川土地改良区連合発行「赤川史」序章一頁)。赤川は、昔は下流域で最上川に合流していましたが、昭和30年の干拓により、最上川の河口から8キロほど南で日本海に注ぐ現在の流路になりました。櫛引近辺の川幅は70メートルくらいでしょうか。川の水は雪を融かし、大地を潤しながら海に向って流れて行きます。

次の写真は、1月下旬の鳥海山を庄内町から撮影したものです。水田はすっかり雪に覆われています。遠く鳥海山も雪化粧。然し太陽は常に雪を融かし、地中に水を蓄え続けているように思います。

ところで、この雪。
出羽庄内特産の有機農法の水田の雪は早く融けるそうです。下の写真をご覧ください。これは今年の1月中旬の写真です。確かに畦の左右で雪の融け方が若干違います。左側の田んぼの雪は早く融けているように見えます。「オーガニックの田んぼの土の温度は高い。だから雪が早く融ける」と出羽庄内特産の代表が以前に話してくれました。

次の写真は4月中旬の梅林です。鶴岡市湯田川(ゆたがわ)の梅林公園です。湯田川は温泉が有名で、この梅林は温泉街を見下ろす位置にあります。
丁度この頃、湯田川でも稲の種子(籾)の芽出し作業が行われます。
農家では3月中に、稲の種子を用意します。その手順は、中身の詰まった種子を選ぶために塩水につけて選別し、いもち病などの病原菌を殺す消毒をし(農家によっては、農薬を使う場合もあるし、農薬を使わず温湯を使う場合もあります)、種子に発芽に必要な水分を吸収させるといったところです。
こうして用意した稲の種子を4月に発芽させる訳です。発芽は種子に30度くらいの温度を加えます。これには、古くからの方法ではポリ容器や風呂桶の温水に漬ける方法があり、今では専用の催芽機を使う方法があります。催芽することで芽の長さを1ミリメートルくらいに揃え、その後の管理を容易にします。

続いての写真は、再び鳥海山です。鶴岡市藤島からの遠望です。季節は5月下旬。山頂の積雪は十分に消え、水は水田に導かれ、既に稲の苗が規則正しく植えられています。水を湛えた田面は鏡のようです。

最後の写真は、6月初旬のサクランボ畑で撮った一枚です。佐藤錦だと思います。佐藤錦の季節が終わる頃に、その交配種である紅秀峰(べにしゅうほう)が最盛期を迎えます。サクランボは異なる種類の品種が植わっていないと受粉しませんが、佐藤錦と紅秀峰は非常に良い組み合わせだそうです。出羽庄内特産では、ハチを飼っていて、このハチが受粉を手助けしています。

エネルギーのバトンパス

冬から初夏。日光は雪を融かし、水は川を下って田を潤す。水は熱量を含み、稲の種子を目覚めさせます。いっぽう水は様々な養分を溶かし土壌を富ませ、根がこれを吸収して、稲は育つ。かたやハチは花粉を運び、サクランボは実をつける。
稲も桜桃も光合成をします。そして太陽のエネルギーを化学エネルギーに変換して食料として我々の前に提供してくれます。
太陽エネルギーを受け取った稲や桜桃、そして水。様々なプレーヤーたちのバトンが複雑につながって、エネルギーの手渡しが行われて、自然が運行されているというイメージが湧いてきます。
そして作物を育てる農業は、細心の注意を払って、このバトンパスの一部に参加しているのです。

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