オフィスマルベリー

つねに足元にありながら、わかっていない「土」。

第一弾で、計7回に渡って「水をめぐる旅」を紡いできた『庄内Life Village Report』。雨、雪、地下水、川、湧水、農業用水、生活用水、海というふうに姿かたちを変えながら、この地を潤してきた「水」が、恩恵にもなり得、また一方で脅威の対象にもなってきたことを私たちは辿ってきた。レポートしてきた通り、循環し続ける庄内の「水」がここまで多くのエピソードを持っている理由のひとつは、庄内平野が米どころであり、長年の苦労の上に築き上げられた水田風景がいたるところに広がっているエリアでもあるからだと言える。また「水」は水道を通じて暮らしの中にまで引き入れられ、人々が直接口にすることができるという点も大きかった。人間の身体は約60%が水でできている。それに加えて、風呂や洗濯、調理や食器洗いなど、「水」に触れずに日常生活を送ることはほとんど不可能である。

第二弾では、視点を一気に変え「土」にフォーカスしてみようと思う。農業という視点から見ても、文化という視点から見ても、「土」が人間の暮らしにとって重要な要素のひとつであることに異論はないだろう。だが、当たり前のように足元にある「土」について、私たちはどれほど理解をしているのだろう。もしかしたらほとんど、あるいはまったく、私たちは「土」のことをわかってなどいないのではないだろうか。
振り返ってみれば、第一弾「水をめぐる旅」の第1回目となった「森の水編」は、「湿った土を踏みしめる音が、あたりに響く。」という一文ではじまっている。その後、庄内エリアのさまざまな場所に足を運んだが、私たちの足元にはつねに「土」があったと言ってもいい。黒ずんだ土があり、赤茶けた土があり、ぬかるんだ土があり、乾いた土があった。「土」とはいったい、いかなる存在なのか。

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