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「ほとりあ」では定期的に、小学生向けのイベントを開催しているが、毎回大盛況なのだという。ウシガエルやザリガニの捕獲、赤とんぼの観察。その人気の秘密は、子どもたちだけでなく、その保護者や教員にとっても刺激的なアクティビティとなっているからだ。遠い過去に体験した、なつかしい思い出。あるいは、世代によっては体験もしたことがないようなできごと。「今年、子どもたちと力を合わせて駆除した水路では、短時間で1300匹ものザリガニを捕えたことがあったそうです。すごい数ですね(笑)。地元民が楽しめる機会があることは本当に嬉しいこと。と同時に、イベントを通じて、人の手が加わることで守られる自然があることを知っていただき、次の世代に生物の多様性を継承していきたいという気持ちもあります」と佐藤氏は語る。
ところで、捕獲されたウシガエルやザリガニはどうなっているのか。「外来生物と言えども生物は生物。命をないがしろにしないために、地元の飲食店で提供されていますよ」。その飲食店とは、鶴岡市内の欧風酒場「バルデ」と「グッドラックカフェ」(2016年度)。ウシガエルのソテーは、鶏肉や白身魚のような味わい。 一方のアメリカザリガニはフランス料理の高級食材でもあるが、日本ではもちろん馴染みは薄い。実際に食した人物によれば、かすかに草や泥といった「湿地の風味」がする、とのことなのだが。
その回復には途方もない時間がかかるだろう。だが、たとえそれが手探りでも、 人間が手を入れなければ、「本来の自然」は戻ってくることはない。
「ここは湿地ですが、 放っておくとすぐに陸地化してしまいます。植生も変わる。 少人数で管理を続けても、 そこにも限界はあります。 『ほとりあ』は多くのサポーターの皆さんに協力してもらっていますので、効率よく上手に考えていきたいですね」。人間が関わることで崩れてしまった自然のバランスがある一方で、 人間の関わりがなければ整えられない自然のバランスがある。 のどかな田園風景の裏側で、 未来のために、 過去や現在と向き合おうとする人がいる。